防衛銘柄総点検
12月9日、ロイター通信の発表によると、政府・与党が新たな防衛力整備計画初年度に当たる2023年度の防衛予算を6兆円台半ばと想定していることが分かった。弾薬の調達費用や長射程ミサイルの関連経費などを計上する方向だ。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。
22年度当初の防衛予算は約5兆4000億円だった。23年度当初案は1兆円程度の増額とし、厳しさを増す安全保障環境に備える。
今回の防衛予算増大により、防衛産業の立て直しに期待を込めて、防衛関連銘柄を総点検します。
関連銘柄
三菱重工業
日本の防衛産業の頂点にいる、三菱重工業。日本を代表する総合重工業の最大手。
防衛トップ企業として戦闘機・ヘリコプター・イージス艦を含む護衛艦・戦車などを製造しています。
23年3月期業績予想 | 売上 | 営業利益 | 営業利益率 | ||
航空・防衛・宇宙 | 6,000 | 15% | 200 | 9% | 3.3% |
エナジー | 16,500 | 42% | 1,300 | 59% | 7.9% |
プラント・インフラ | 6,500 | 16% | 300 | 14% | 4.6% |
物流・冷熱等 | 10,500 | 27% | 400 | 18% | 3.8% |
合計(億円) | 39,500 | 2,200 | 5.6% |
セクター別の売上から防衛関連セクターの売上をみてみましょう。
航空・防衛・宇宙のセクターになりますが、全てが防衛関連ではありませんが、参考セクターとしてみてみますと、6000億円です。全体比率では約15%程度になっています。
営業利益は全体の9%です。防衛費が増大となっても、業績への影響は大きくないようです。
営業利益率をみてみると、3.3%で儲からないセクターとなっています。
川崎重工業
陸・海・空の輸送機器・システムの大手重工業メーカー。
航空機用エンジン製造品、航空機(輸送機・哨戒機、ヘリコプター)
売上 | 営業利益 | 営業利益率 | |||
航空宇宙システム | 3,500 | 21% | 15 | 2% | 0.4% |
車両 | 1,400 | 8% | 35 | 5% | 2.5% |
エネルギーソリューション・マリン | 3,300 | 20% | 25 | 3% | 0.8% |
精密機械・ロボット | 2,700 | 16% | 200 | 26% | 7.4% |
モーターサイクル・エンジン | 5,000 | 30% | 450 | 59% | 9.0% |
その他 | 900 | 5% | 40 | 5% | 4.4% |
合計(億円) | 16,800 | 765 | 4.6% |
航空宇宙システムセクターをみてみますと、3500億円です。全体比率では約21%程度になっています。
営業利益は全体の2%です。三菱重工業同様に防衛費が増大となっても、業績への影響は大きくないようです。
営業利益率をみると、0.4%で全く儲からないセクターとなっています。
IHI
総合重工業メーカー、(旧)石川島播磨重工業
売上 | 営業利益 | 営業利益率 | |||
航空・宇宙・防衛 | 3,400 | 26% | 300 | 30% | 8.8% |
資源・エネルギー・環境 | 3,600 | 28% | 260 | 26% | 7.2% |
社会基盤・海洋 | 1,700 | 13% | 170 | 17% | 10.0% |
産業システム・汎用機械 | 4,300 | 33% | 270 | 27% | 6.3% |
合計(億円) | 13,000 | 1,000 | 7.7% |
防衛関連セクターの売上は、3400億円です。全体比率では約26%程度になっています。
営業利益は全体の30%です。三菱重工、川崎重工とは異なり、利益が大きく、防衛費増大の恩恵を最も受けそうですね。営業利益率も、8.8%あり、多少なり利益は出ているようです。
東京計器
精密機器メーカー。防衛関連は戦闘機用レーダー警戒装置・哨戒ヘリコプター用逆探装・海上交通システム関連機器・計測・自動制御機器など。
売上 | 営業利益 | 営業利益率 | |||
船舶・港湾 | 95 | 21% | 3.3 | 16% | 3.5% |
油空圧 | 124 | 27% | 2.7 | 13% | 2.2% |
流体 | 45 | 10% | 5 | 25% | 11.1% |
防衛・通信 | 152 | 33% | 4.2 | 21% | 2.8% |
その他 | 38 | 8% | 4.9 | 24% | 12.9% |
合計(億円) | 454 | 20.1 | 4.4% |
防衛関連セクターの売上は、152億円で全体の約33%もあります。
営業利益は全体の21%です。売上高が小さいわりに、防衛関連の売上比率が高いので、防衛費増大で少しでも予算が回ってくると、業績への恩恵は大きく受けそうですね。
新明和工業
特装輸送機器メーカー。防衛省向けUS-2型救難飛行艇(川崎重工業・島津製作所と共同開発)製造・保守。
売上 | 営業利益 | 営業利益率 | |||
特装車 | 915 | 41% | 1 | 1% | 0.1% |
パーキングシステム | 393 | 18% | 24 | 24% | 6.1% |
産機・環境システム | 300 | 14% | 25 | 25% | 8.3% |
流体 | 223 | 10% | 31 | 31% | 13.9% |
航空機 | 233 | 10% | 9 | 9% | 3.9% |
その他 | 156 | 7% | 10 | 10% | 6.4% |
合計(億円) | 2,220 | 100 | 4.5% |
防衛関連の航空セクターの売上は、233億円で全体の約10%しかありません。
営業利益は全体の9%です。救難飛行艇という防衛省との関わりが限定的なので、防衛費増大の恩恵は小さいと思います。
豊和工業
工作機械メーカー。
防衛装備品の主要メーカーとして自動小銃(国内唯一の小銃メーカー)・発煙弾・発煙弾発射機・火砲を製造。
豊和工業 | 売上 | 営業利益 | 営業利益率 | ||
工作機械 | 65.9 | 33% | -4.9 | -207% | -7.4% |
火器 | 35.5 | 18% | 0.67 | 28% | 1.9% |
特捜車両 | 24.7 | 13% | 1.1 | 46% | 4.5% |
建材 | 32.7 | 17% | 0.2 | 8% | 0.6% |
不動産 | 4.9 | 2% | 3.8 | 160% | 77.6% |
その他 | 33.2 | 17% | 1.5 | 63% | 4.5% |
合計(億円) | 196.9 | 2.37 | 1.2% |
防衛関連の火器セクターの売上は、35.5億円で全体の約18%しかありません。
営業利益率は1.9%で儲かっていないセクターです。
自衛隊員が大幅に増加しない限り、自動小銃の需要も大きく変わらないと思いますので、防衛費増大の恩恵はほとんどないと思います。しかし、国内唯一の小銃メーカーであることから、防衛関連として注目を集めることでしょう。
細谷火工
火工品メーカー。自衛隊・警察庁等官需向けは救命・救難・訓練用の発煙筒・照明弾を中心に販売。主要取引先は防衛省(売上の約40%)
売上 | 営業利益 | 営業利益率 | |||
火工品事業(官公庁) | 9.57 | 53% | |||
火工品事業(民間) | 6.67 | 37% | |||
賃貸事業 | 1.69 | 9% | |||
合計(億円) | 17.93 | 1.81 | 10.1% |
22年3月の業績からセクター売上を見てみます。
官公庁向けの加工品事業の売上は、9.57億円で全体の約53%もあります。
そのほとんどが防衛省むけとなっています。
営業利益率は全体で約10%あります。
防衛費増大により、演習が増えれば自然と加工品の需要も増えることでしょう。
また、防衛費増大には、弾薬の調達費用も含まれることから、防衛省向け加工品の主要メーカーである位置づけからも、注目を集めることは間違いないでしょう。